国民生活センター発行の「くらしの豆知識 ９６年版」のために執筆した原稿に、かなり大幅に加筆したものです。
なにぶん、元が小冊子２ページ分の原稿ですので、まだまだ、言い尽くせないことがたくさんありますが、今後ハイパーテクストの利点を生かして、ここからリンクを張る形で、さらに詳しい情報を提供してゆきたいと思います。
建築請負契約をめぐるトラブルには、一方では業者側の悪質な手抜きに構造上の欠陥によるものもある一方で、契約のときの、建築主の見込みと業者の思惑が違っていたことによるものも、意外に多いのです。
この後のケースのようなトラブルの原因のほとんどは、どのような建物をどんな材料や設備を使って建てるのかが、契約ではっきり決められていなかったことにあるようです。
参考文献 宮脇檀・それでも建てたい家・新潮文庫
住宅と一口にいっても、その建築工事は、
という性格を持っています。
建築主としては、業者と十分に打ち合せをして、できるだけ細部まで仕様を固めたうえで、設計図、仕様書、見積書など契約の細目にあたる文書を提出させ、打合せどおりに記載されていることが確認できてから契約を結ぶようにすべきです。
また、その際も、間取りなど、いわば家の水平方向の問題に気を奪われがちですが、床の段差、階段の傾斜、窓や出入口の高さ、天井部分に梁が出るか出ないかといった、家の垂直方向の仕様を明確にすることを怠りがちですので注意が必要です。
右のように、契約は、極端にいえばカーテンや床材の色・柄やメーカー名・型番に至るまで確定してからするのが本来の姿です。
やむを得ず工事の途中で仕様などを決めたり変更したりするときは、簡単なメモ程度のものでもよいので、その打合せの結果を文書にし、それに業者から確認のサインかハンコをもらうようにします。
面倒なようですが、後の「言った」「聞いてない」という、水掛け論になりがちなトラブルを防ぐのに有益です。
建物の仕上や設備が明らかに契約と違っている場合や、誰にでもわかる仕上げのミスなどは、業者側も補修に応ずるのが通常です。
しかし、トラブルの中には、構造用の部材の不良、断熱材の欠落や方向違いなどのように、補修のために大幅な手戻しを必要とするものや、さらには、基礎の強度が不十分な場合などには建物自体を取り壊さなければ補修ができないこともあります。
これらの補修には多額の費用を必要とする反面、建物の基礎・骨組あるいは壁の内側などといった、いったん建物が完成してしまうと見えなくなってしまう部分に起因するものが多いために、業者側が、明確な証拠が無いことを理由にして補修に応じないことがまま生じがちです。
そのような事態に備えて、工事中に、現場の写真だとかビデオをたくさん撮っておくことをおすすめします。
契約前の段階でも、また、トラブルに対応するときにも、建築に対する専門的な知識が必要となることがあります。
このようなときは、業者や業者の社内の建築士まかせにせず、むしろ業者と利害関係の無い建築士など第三者的な立場の専門家のアドバイスを受けることが有益です。
ことに、基礎や壁にひび割れ等が生じた場合は、建物の構造に重大な問題点があることが疑われますので、なるべく早く専門家に調査を依頼すべきです。
また、雨漏りなども、確かに簡単な補修で済む場合も多いのですが、建物の構造に問題があるために建物が変形してしまったことが原因となっていることもありますので楽観はできません。
結論としては
家は、一生に一度あるかないかの大きな「買い物」です。
トラブルを未然に防いだり、起こったトラブルを的確に解決するためには、契約の前後にかかわりなく、決して時間や手数、さらに場合によっては費用をかけることを惜しまないことが何よりも大切です。
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